世界的なタンナー 栃木レザー工場見学

世界で評価される革なめし工場

「なめし」とは、そのままでは腐ってしまったり固くなってしまう「皮」を道具として使いやすく耐久性のある「革」として利用できるようにする作業のことです。

世界でも少なくなっているベジタブルタンニン(天然由来のタンニン)を使用した「なめし」をするタンナー(革なめし工場)、その中でも世界的に評価されている栃木レザー株式会社の工場見学する機会をいただきました。

今回の記事は栃木レザー株式会社 製造統括部部長 遅澤敦史氏のご案内・説明を元にしたものになります。

なかなか見学できないと聞いていただけに貴重なお話を聞くことができ、これを読者の皆様にもお伝えできればと思います。

栃木レザーとはなにか?

「栃木レザー」とは栃木レザー株式会社によって製造された「革」のことを指します。

よくショップや雑誌で栃木レザー使用の財布やカバンなどを見かけることがあると思いますが、栃木レザー株式会社では基本的に作っていません。

よく間違われて栃木レザー株式会社へ商品問い合わせがあるそうです、財布・カバン等に関しては製造メーカーかお買い上げいただいたショップへご連絡くださいとのこと

また、革の販売は卸のみで小売はしていないので、お買い求めの際はお近くの手芸店・レザーショップなどでお問い合わせください。

栃木レザーと他のレザーとの違い

1番大きな違いは、かつて硬すぎて商品になりずらかったヌメ革を栃木レザーの職人たちが試行錯誤を重ねて、それまでになかった柔らかくて堅牢性のあるヌメ革を作ることに成功したことで、国内外の一流アパレルブランド・メーカーからオーダーが来るようになったことがあります。

しかし「他との違いは時間のかけ方、ただそれだけです」と遅澤氏は言います。栃木レザーでは1枚の革ができるまでに約20工程があり、当記事ではその中でも4つの工程「タンニンなめし」「セッター」「ドライアップ」「染色」の他では真似出来ない歴史と技術にフォーカスします。

タンニンなめし

タンニンなめし工程に使う「タンニン」とは樹木からとれる樹脂のことで、これにはいくつか種類があり代表的なのがチェストナット、ミモザ、ケブラッチョ、栃木レザーではミモザを使用することで、薄い茶がかった風合いの革にしあがります。

このミモザを溶かし、濃度や温度を調整してピット槽に注がれます。

現在主流の化学薬品を使って短時間で仕上げる「クロムなめし」は1週間ほどでなめし工程は完了しますが、栃木レザーは世界的にも大規模な約160ものピット層を持ち、淡い槽から濃厚な槽まで、濃度の異なるタンニンのピット槽を浸し渡って約20日と倍以上時間がかかる


このように時間をかけてなめした革は、コシのある丈夫な革に出来上がる

セッター

「セッター」とは革の厚みを均等にする作業、ブランドからの希望により手仕事で行う場合もあり、代々培われたハンドクラフトの技術と経験、知恵や勘を持った職人が栃木レザーを支えていると言っても過言ではありません。

そしてこの「セッター」に使う道具はすでに製造されていないためメンテナンスをして大切に使っています、その他にも70年以上の歴史がある社内には代用できない設備も多くあるためメンテナンス専門の部署もあるそうです。

ドライアップ

水分を含んだ革は、これまでに培ってきた経験をもとに適材適所で革は干され、徹底した温度・湿度管理のもと、理想的な環境で乾燥されます。


染色

色艶、耐久性を増すためのひと手間としての染色
下地の染色には回転ドラムなどで染料と革を入れて行なうが、表面の染色には人の手で行なっている、色見本を参考に手加減で色を決めてむら無く染めていく作業はまさに職人技です。

歴史と伝統を受け継いでいくなかで

栃木レザー株式会社は昭和12年9月1日創業以来の歴史を持っています。タンナーとして技術の積み重ねとその継承を常に認識し、品質の維持・向上を目指しているとのこと、世界的に有名な一流鞄ブランドからのオーダーでも栃木レザーの方針に合わない案件は断っているお話などもされていて、本当にプライドを持って制作されていると感じました。

栃木レザー公式HP
www.tochigi-leather.co.jp/